ロマン主義アニメ研究会

感想、考察、等。ときどき同人誌も作ります。ネタバレ注意。

ごちうさがこわい ──ごちうさの文章を書く体験

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新刊『鏡の国/すてきなセカイ:ごちうさ「旅行」エピソードを読む〈出発編〉』

 

ごちうさに関する文章を書いているときの不思議な体験について、ちょっとここに書いておきます。面白い体験なので。

元々、私は書き始めたらあっという間に文章は書けてしまう方ではあるのですが、特にごちうさに関する文章の場合、書き始めたら、あとは自動的に、どんどん進んでいきます。これが本当に不思議なんですが、ごちうさに関する文章は、最初にちょっとだけこんなことを書こう、というような小さな出発点から、あっという間に出来上がります。出来上がって初めて、ああ、こういうことが言いたかったんだ、と、後から自分で気がつきます。

変な言い方ですが、自分で文章を書いている感じがしません。「宝箱のジェットコースター」に乗って、気がついたら終点に着いてるという感じです。*1 そしてそれは、明らかに、ごちうさ本編そのものの構造が、そのようにしっかり組み立てられているからなのです。『ごちうさ』に、何か一つ、とても細かい点について問いかけてみると、その何倍もの詳しい答えが返ってきます。ここはどうしてこうなっているのですか? このような解釈でよいのですか? と、コミックスや雑誌(さらにCD)を開きながら質問してみると、その答えはすぐ返ってくるし、さらにその何倍もの新しい発見をおまけでつけてくれたりもします(さらにその新しい発見を少したどると、さらに別の意外な発見につながったりもいたします)。本当に、とても不思議な作品です(ちょっとこわいくらいです──そう、ときどき私は、ごちうさがこわい)。

──これはひとがつくった作品なのだろうか…何か神のような存在者による業なのではないか…とか…ちょっとこわいです。…雪の結晶とか、小さな昆虫の構造とか、ひとが容易に作り得ないような小さくて美しい構造体を、顕微鏡で発見したときのAmazing!と言いたくなるような経験に近い気がします。小さなもう一つの《自然》が、そこに広がっている。──だからおそらく、私たちはごちうさを通じて、私たち自身を知ることになるのでしょう。

・・・いえ、むしろ逆であって、私たちの住む《自然》を、その中に反映してしまう"鏡"のようなものが、『ごちうさ』なのかもしれません。そうであるならば、「こわい」のは私たちの住む世界の方だということになります・・・。

 

そういうわけなので、ごちうさに関する文章は、いったん書き始めたなら、もう止まりません。全部の文章の約半分くらいは、暮らしの中のわずかなすき間の時間で書いたりしています。普通は細切れにこういう作業をすると思考が中断されて効率が悪いはずなのですが、ごちうさの文章に関しては、寸断された時間でちょこちょこと書いても全く効率が落ちません。それは本当に、自動的なプロセスを次々とたどっていくような感覚なので、このプロセスをいつ一時停止して、どこで再開しようとも、全く平気なのです。

そういうわけで、いつも私のごちうさに関する本は、全てが驚くほど短時間で(半自動的に)書き上げられています。毎回、ああ、今回こそは、新刊はないんだな、まあそれでもいいか…と思って、冷や汗が出るくらいギリギリの日程から書き始めているのに、しっかり間に合ってしまいます。・・・そして、こういう経験がよくないのですよね、すっかり味をしめてしまい、毎回一度は冷や汗はかくことになります、できればそんな汗かかずに済みたいです。

 

・・・そのようにして(?)書かれた【新刊】のお知らせは、こちらです。コミックマーケット95(2018/12/29)での頒布、書店様委託販売がございますので、よろしければどうぞ。 

miusow.hateblo.jp

 

 

 

(・・・ええっと、ちなみに、この作品をご存じない方のために書いておきますが、「ある意味、こわい」という意味であって、全然、普通の意味で怖い作品ではありませんよ。まったり、暖かく、のんびり楽しめる作品です、本来。 *2 それをこわいとかいう私の方が怖いんです。もうね、ハマりすぎて、おかしくなってるんですよ。そういう人がいるんですよ。)

 

  

*1: だから、今回の新刊も、自分で書いた本なのに、後から自分で読んで、すごく面白く感じました。それは自分で書いたという気がしないからです。そして何より、ごちうさが面白いからです。──そう、新刊、面白いですよ(宣伝)。 

*2: ご家族で、年越しの時にコタツでみたりしてもいいくらいの作品です。気まずくなったりしないと思うので大丈夫です。1年前に映画館で公開されたスペシャルエピソード『Dear My Sister』が年末年始にBSで放送されるそうなので、ご家族の方は是非、お茶の間でご覧になってください。