ロマン主義アニメ研究会

感想、考察、等。ときどき同人誌も作ります。ネタバレ注意。

如月ルヰ、美少年のプリズム──『KING OF PRISM(キンプリ)』シリーズ感想

(※激しく偏っています、ルヰくんに。「プリリズ&キンプリ」シリーズに何か強いこだわりをお持ちの方、どうか怒ったりしないでください。あと全体的に気持ち悪いです。)

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なんとなく動画配信で見た『KING OF PRISM -PRIDE the HERO- 』(キンプラ)で、私はすっかり如月ルヰくんに頭をやられてしまいました。

一時期は、本当にルヰくんのことばっかり毎日考えていて、今思うとひどい話だけど、会う人会う人に、ルヰくんの魅力を語っていた(語られても困るだろうに…)。彼がいかに美しいか、画像を見せながら話した(その結果、ある人は副産物的にアレクにハマった)。だって、本当にハマっていた頃は、頭の中がルヰくんでいっぱいで、話したいことなんて他になかったんだもの。いつも頭がボンヤリして、日常生活がおろそかになりかけるほど。さすがに最近ではちょっと落ち着いてきましたが、それでもルヰくんのイラストや、歌声なんかにちょっとでも触れたら、再びその時の気持ちがすぐに蘇る。理性をすっ飛ばして、ほとんどパブロフの犬のように(そう、ルヰくんの犬にでも何にでもしてほしい)。

こうやってルヰくんのことばかり毎日考えているうちに、だんだん作品本編から外れて、もはやルヰくんが私の妄想の中の別の存在に変化してきているような気もする。──けれども、そもそも”本当の”ルヰくんって、”だれ”のことなのでしょう? ルヰくんは、どこまでがルヰくんで、どこからがルヰくんではないのでしょうか?? そして、いつまで”ルヰくん”でいてくれるのでしょうか…??? ──こんなに好きになった相手が、そんなことすらもフレキシブルだなんて。なんと過酷なことだろう。いっそ最初から好きにならなければよかった…。

でも、そんなふうに存在もアイデンティティもあやふやで、つかみづらくて、気がつけばまたどこかへ行ってしまいそうな…そんなルヰくんだからこそ、私たちはついいつもまた彼のことを気にかけてしまうのかもしれません。(魅力的な美少年とは、昔からたいてい、もろくてはかなく、幻想的なもので、いつでもふっと消えていなくなりそうな、でも本人はそんなひとの心配をよそに、平然としているようなところがあると思う。)

そんな悩ましい「ザ・美少年」、如月ルヰくんを、うまく愛していく方法について。

もくじ

ルヰくんの魅力

(半分以上妄想。)

・超絶的な美貌。黄金比?みたいな。

・ミステリアス。何を考えているのだろう、と考えてしまう。(もうその時点ですでに彼のペースに乗せられている。)──何もかも(いろんな意味で)知っていて、見透かしていそうな美少年*1は、その美貌から、昔から周りの人たちを惑わす…というより、勝手に周りの人たちが騒ぎ立ててしまうけれど、本人はまったく意に介していない…っていうような。これはもう別のキャラになってるかもしれませんが。

・いたずらっぽい雰囲気もある。──シンくんを抱きしめた後、ぴょんぴょんと走って行っちゃいましたよね(1作目『〜by Pretty Rhythm』)

・白い肌。白い肌。

・指が長くて、爪がきれい。

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・何気にシッカリとした肉体。ある程度鍛えられている。(だがアレクサンダーほどであってはいけない。) ──張り詰めたような強さがあり、かっこいいのがルヰくん。

・だが同時に、もろく、はかない。 さっきまで元気だったのに…え、大丈夫?急に体調を崩したり…、いろいろ心配させられる(心配したい、労りたい、額の汗を拭いてあげたい)。

・横顔が綺麗。本当に。──見とれてしまう。

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・切れ長の、美しいお目め。透き通る瞳。…じっと見つめられたら死ぬ。 ──さっきも一回死んだ。この記事の画像を処理していて。(『SSS』オープニングの、あの一瞬で死ぬ。月下の美少年。)

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(↑鼻血…死…。首の傾け方は、この角度の瞬間が一番良いと思う。)

・肩とか鎖骨とかが見えそうな感じの服装。たまらない。(そんな近づいたら、あの、その、いろいろ中が見え…)

・ピアスが似合う。劇的に似合う。

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・結局どんな服装でも似合う。かっこよくも(prideの「僕だよ!」衣装も良い)可愛くもなるし、最終的に美しい。──ああ、本当に美しい。

・美声。もうちょっと低い声でもいいような気もしないでもないけど、そんなくだらない注文をつけるほど私は偉くない、この美神を前にして、畏れ多いので…。

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・割と無邪気に笑う。

・15歳前後…。(シンくんと同じぐらいだと考えると?) ザ・美少年は、伝統的にだいたいこれくらいの年齢だと思う。

ギリシア神話に登場する美少年のよう。ギリシアの彫刻や、ルネサンス美術からそのまま抜け出てきたような。本当に。──大理石は光を透過するから、その彫刻はすべすべで透明感があって、キラキラ輝いている。ルヰくんの白い肌は、きっと大理石なんだと思う。君を彫刻にして飾りたい…とか、そういう怖いセリフが浮かんだ。月光に照らされるルヰくんの白い彫像…。

・寝顔もきれい…ずっと眺めていたい(エンディング画面で横向きに寝ていましたね、ジュネふうに)。──閉じられた瞳から、月光に照らされて、長い睫毛が影を作っていたりする。うっとり。「すぅ…」みたいな呼吸音が聞こえる。

・ご飯の食べ方が綺麗…きっと。これも見たことないけど(大食いはしていたが、食べているところは見られなかった)。フランス料理とかを丁寧に食事する様子をじっと眺めていたい。

・良い香りがする。香水なんかつけてもつけてなくても、つねに良い香り。*2

──ちなみに、ルヰくんの香りは、柑橘っぽい香りに、お花っぽい香り(ジャスミンとか)、またはバニラっぽい甘い香りが一滴だけ入ったような、そんな感じかもしれない。石鹸っぽい香りも残る(爽やかで、無防備なバニラ的な甘さ、清潔感)。

・ルヰくんは未成年?だろうけど、勝手にルヰくんは、カシスを使ったお酒のイメージだと思う。そういう甘さが似合うと思う。あとは柑橘類。なので、勝手にルヰくんドリンクとか、ルヰくんカクテルなどというものを作って、楽しんでいる(何をやっているのだろう)。赤ワインを柑橘類で割ったものとか、そういうイメージ。──ルヰくんのことばかり話しているので、とうとう知人から「ストローに設置するルヰくんグッズ」をプレゼントしてもらった。それを付けた容器に、そのルヰくんドリンクを入れて持っていき、お風呂に入る。そしてルヰくんボイスの歌を聴く。あのビルの最上階のお風呂みたいな気分に浸る。ギリシア神話に出てくる、美少年とともに行われた雲上の饗宴のような気分にも浸れる。

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CRAZY GONNA CRAZY」プリズムショー

シンくんと組み合わさったとき、ルヰくんはまた、とてつもなく魅力的になる。特に私は、2作目(『キンプラ』って言うみたいね──そういうのもよくわかっていなかった)の、シン&ルヰのプリズムショーのシーンが、もうずっと頭から離れない。

雪が降りそうな冬の夜、川べりで、可愛いコートを着た2人の綺麗な少年が、腕を組んだりして、夢中になって、楽しく踊る。完全に、私の頭はこの映像に支配されてしまった。あのイメージの完全な虜になってしまった。

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「腕に手をからませればゴキゲン」のところのルヰくんが可愛すぎて可愛すぎて…。ねえ、踊ろうよ!ってルヰくんが腕に抱きついて誘われたときは「はわわ…」ってなっていたのに、プリズムショーが始まると、すっかりノリノリで踊っていたシンくんもまた可愛かった。

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美しい横顔。キラキラと光るステージに、TRFの曲もとてもよく合っている。キラキラにアレンジされていて、それがまた素敵だった。歌は、ルヰくんの声が美しいのはもちろん、シンくんの歌い方が、ルヰくんに比べてすっごい素朴で、とにかく頑張って歌ってみました!みたいな感じで可愛い。

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「ほんの一瞬でもあなたと いっしょならいいと思ってる」

でも、この閉じられた完璧な世界は、いつまでも続かない。ほんの短い間だけ許された、幻のような時間。

ほんの一瞬でもあなたと

いっしょならいいと思ってる

(一条シン (寺島惇太) & 如月ルヰ (蒼井翔太)「CRAZY GONNA CRAZY」、作・詞・作曲:小室哲哉

こんなふうに私は、あのシン&ルヰ「CRAZY GONNA CRAZY」プリズムショーという短い場面に対して、すっかりどっぷりと、(おそらく過剰な)憧れとか妄想を投影して見てしまい、「プリリズ&キンプリ」のお話全体の文脈が全然頭に入ってこないくらい、あの2人のこと、とくにルヰくんへの過剰な思入れ、というよりも、私の勝手な思い込みや妄想に、完全に没頭してしまったのです。

嫌な予感──でも…早く『SSS』を見ないと…

そう、なんだかよくわからないし、あまり深く考えたくなかったけど(…ひたすらうっとりとあの2人の少年の幻想に浸っていたかったから…)、嫌な予感がしました。『キンプラ』を見ながら、こんなふうにルヰくん(やシンルヰ)を愛していけばいくほど、こんなに気持ちを投影しちゃって大丈夫なのだろうか?って。

だってね、私の愛しているルヰくんが、本当のルヰくんじゃなかったら、どうしよう・・・???って。(なに?りんね?あの子また出てくるの…?)

そこで私は、しばらく、続き(『〜-Shiny Seven Stars-』)を見ないで、同じ作品をもちもちと反芻して味わうことにしたのでした。この甘い感情をずっと味わっていたい。それに、ミステリアス少年のミステリーが解けちゃったら、つまらないではないですか。

ルヰくんは、ルヰくんだよね…??(必死)──存在もアイデンティティもあやふやな少年を愛するためのハードル

けれども、そうも言っていられない。そしてようやく観た『SSS』なのですが……

なんかすんなりうっとりできない…よくわからない…でもなんか、すごく不穏なことが描かれていない…?? って思いました。まず、初見では、単純に設定・ストーリーがよくわからなかった…(10話以降)。

たぶん、私は『キンプラ』で、みんなと違って、1人だけ、そこに別の作品を見ていたんだろうと思います。その流れる映像の向こうに、私自身の勝手な物語を見ていたのでしょう(特に、「CRAZY GONNA CRAZY」)。そしてその物語が、私は好きなだけなのでしょう。だから私は、本当は、ルヰくんではなく、ルヰくんによく似た脳内オリジナル美少年が好きなだけであって、『キンプリ』ではなく、その脳内美少年が登場する脳内オリジナルストーリーが好きなだけ、なのかもしれません。寂しいことですが、そうなのかもしれません。

み〜んなただの幻だったの…?

ただ、どうしても、一応確認しておきたいことがありました。生理的に、こういう設定だったら本当につらいなあ、っていうことがあって。だからちょっとだけ、『公式設定資料集』などを読み込んだり、『RL』を見返したりして、確認したいことを確認しました。

つまり私は、ルヰくんには、ルヰくんという「少年」でいて欲しいのです。つまり、女の子が中身の単なる「ガワ」だけのひととしての如月ルヰという「少年」が設定されていて、その中身の女の子が、一般的な異性愛感情を、シンくんあるいはシャインという(私がいまいちよくわかっていない)存在に寄せているだけ、っていうのだったら、嫌だな……って思ってたから。勝手ながら。

例えば、このルヰくんは結局あの「りんね」なの?って考えると、少し暗い気持ちになる。あの時のルヰくんも、あの時のルヰくんも……私がうっとりと憧れたルヰくんは、全部りんねだったの…??って…。

さらには、いろいろなルヰくんの行動も、実は「プリズムワールド」の指示を実行しただけだったの?って考えると、もっとつらい。

りんねではなくルヰくんとして

でも、RL&キンプリシリーズを何度か見返して、『資料集』を調べたりして、なんとなく気持ちの整理が(ちょっとだけ)つきました。

ルヰくんという少年の意志や、ルヰくんからシンくんへの気持ちは、『SSS』の”遊園地デート”〜「I know Shangri-La」プリズムショーあたりでは、はっきり、りんね・シャイン・「りんねシャイン」とは、別個のものとして確立した、というように解釈してよいということはまずわかりました(「りんねとしてではなくルヰとして」*3)。

特に、帰宅後のシンくんからは「女の子の匂い」はしない、ってレオが判定していた様子だったから(『SSS』第10話)、要するに、もうルヰくんは「女の子」じゃないってことよね。ルヰくんは、遊園地デートを通じて、シンへの想いに気づくと同時に、りんねから切り離された少年・ルヰとしての意識を自覚した、ということで良いのでしょうか。

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いつからルヰくんだったの…?

では、「CRAZY GONNA CRAZY」は? ここは微妙なところで、でも、こう解釈してもいいのではないかと思います。つまり、はっきりと気づいてはいなかったけれど、シンくんが好き、っていう気持ちは、この頃からルヰくんの中にちょっとずつあった、と。

「初めは【気がつかなかった】」

「でも 今はハッキリと分かる」

(ルヰ、SSS第10話)

また、プリズムジャンプ中の、

「1000年前から、あなたを愛していた!」

(ルヰ、SSS第10話)

というセリフも、ただ単に「気がつ」いていなかっただけで、実はずっと前から(「1000年前から」*4)、実はシンを「愛していた」んだ、ということだと思います。

そして、もしそうならば、もうその頃から、ちょっとずつルヰくんには、りんねと区別された「ルヰくん」という少年の意識も生まれつつあったんだよ。うん、そうだと思うよ。そう思いたい。

いずれにしても、安心して楽しめるのは”遊園地デート”以降なので、そちらに感情移入をシフトさせていけばいい話なのですが…けど、「CRAZY GONNA CRAZY」は、やっぱりほんと大好きだったからなあ。

(ただ、ちょっと疲れた…)

ただ、そもそも私は、そろそろアニメの美少年に恋するのを卒業するべきなのかもしれない、とも思いました(まあ、それは元々、そうなんですけど…)。アニメのキャラクターは、しょせんはストーリーを構成するための役者なのだとすると、過剰な思い入れを持って恋したりしちゃうと、ストーリー展開に翻弄されてしまうのは宿命づけられていますものね。3次元と違って2次元はそういうリスクが少ないからいいなと思っていたけれど、2次元でもこういうことはあるのです。もう、完全脳内オリジナル美少年をつくって、その彼に恋するしかないのでしょう。あるいはお人形とか。(そのときは、大いにルヰくんの面影を参考にさせてもらいます…。)

それでもなお、一般にいわゆる2次元アイドルコンテンツだと、あんまりそういうことは起こりにくいのかもしれません(アイデンティティがぐらぐら揺らいだり…)。割と安定した気分で「担当」できるようにしてあるのではないかと思います(ただなんにせよ、サービス終了など、運営上の変化は必ずやってくるでしょう)。『キンプリ』は、そういうアイドルコンテンツに似た外見も多分に持っているけれども、やっぱりそれにとどまらない、かなり独特なコンテンツなのだと、改めて思いました(”独特”なのは、今更言うまでもないことなんですけど…)。

りんねに嫉妬

もしかすると、私は「りんね」に嫉妬しているのかもしれません。だって、りんねは、ルヰくんと、ある意味で一番近いところにいるわけじゃないですか。シン君よりも、法月仁よりも。だから嫉妬してるのかもしれない。

それで、ちょっと私、よくわかっていないのですが…最終話の「切り捨て」以降、単品のりんねはこの世界の(ためだけの)女神的な存在になった(「新たな女神が誕生したァ!」)、って感じで解釈してもいいのかな。レインボーゲートに帰っていくことの代わりに…もう帰っていくところもないし。どうなのでしょうか。

ルヰくんの服装について

最初は、私は、ルヰくんがどんどんガーリーなお洋服を着るようになっていくのが、なんか、ちょっと…受け入れ難かった(「ルナティック…」のお衣装は、ガーリーというよりレディースな方向ではあったものの、ギリシア神話風と解釈し、なんとか「少年」の枠内で理解できなくもなかったけど)。「pride」的なかっこいいルヰくんが好きだというのもあるけれども、それだけではない。むしろ、はっきり言ってガーリーなお洋服も彼にとってもよく似合っているし好きだ。けれども、それが単に、少年・ルヰが”心のなかにガーリーなものを持っている”ということなのか、それとも、「女の子のキャラ」として『RL』以来しっかり頭に刷り込まれているあの「りんね」がどんどん表面化してきている証なのか、最初はよく区別がつかなくて、だから素直に受け入れられなかった。ルヰくんがどんどん「りんね」としての正体をあらわにしてきているという意味なのかな…と思って、寂しくなってしまった。

でも、むしろ逆だったのですよね。ちょうどその頃から徐々に「ルヰくん」としての意識が確立していったのだから。むしろそれは、ルヰくんがルヰくんらしくなっていったことの証だと考えることにしている。

(もっと突っ込んで言うと、たとえルヰくんのジェンダーアイデンティティが、「女の子」でも、それ以外の何かノンバイナリーなものでも、これから変化していくのだとしても──何であれルヰくんはルヰくんとして、好きなのです。ただ、それが「りんね」が”中”にいる証しなのだとすると…ってことなのです。)

「プリズムワールド」に対して思うこと

私はルヰくんが、何か他の存在の一部に過ぎないとか(りんねとか)、あるいは彼よりも上位の何かの存在、例えば「プリズムワールド」とか、プリズムの煌きを広めるための「使命」だとか、何かそういう「大きな」意図の支配下で、その指図どおりに動いているだけであって、ただの操り人形である、みたいな・・・そういういわば下位の存在にルヰくんがおとしめられることが、悲しい。

ルヰくんが「プリズムワールド」の単なる下僕みたいな立場に扱われて、一方的にいろいろと命令されている姿は心が痛んだ。悲しい気持ちになった。この神がかった美少年に対して失礼な……。むしろ、さっさと「切り捨てて」ほしい。だから、最終話で、あの7人とみんなのおかげで、「プリズムワールド」に関わらなくなったので、とてもせいせいしました。彼らは、ルヰくんに失礼な「プリズムワールド」から(結果的に)切り離してくれた上に、(間接的に)ルヰくんを救ってくれた(ってことよね?あのリングのおかげで、ルヰくんも保たれたのよね…シャインも拘束されながら保たれちゃったけど…)のだから。本当にあの7人には心から感謝です。(…ただ、あの最終話のあたりのノリは、なんか…うん、少し置いていかれたかな…。というか私だいたいいつも置いていかれている気がする、『キンプリ』の全体のノリから。映画館もなんかそういう気がして、結局行ってない…。)

もともと感じ悪かったよね、「プリズムワールド」って

もともと『RL』の時点で、「プリズムワールド」ってなんか怖くて嫌だな…って思っていました。なるは夢の中で素敵なところ〜みたいに言ってたけど、私はちっとも行ってみたいと思わなかったよ*5

クレヨンみたいなので描かれた虹がかかっているプリズムワールドの絵も、ファンシーに見えて、なんか具体性がなくて不気味だったし。この薄っぺらいイメージ映像は、何かを隠してる感じじゃない?って思ってたよ。嘘くさいというか。

「ピコック先生」も本当に怖かった。モモとのやりとりとか見ていても、威圧的、暴力的で(ギャグっぽくしてたけど普通に嫌なものを感じた)、なんかやだなあって思ってた。「ペンギン先生」も最後かわいそうだった。*6

終わりに:ボーイのプリズム《分光器》──分散していく「少年」

きっとそもそもの話、ハマってはいけないキャラだったのでしょう。如月ルヰくんは。だって、ハマればハマるほど、困ることになる。なぜなら、ルヰくんというキャラクターは、この作品におけるその独特の位置づけからして、存在そのものがあやふやだし(そもそも、彼は存在しているの?いないの?どこに?いつまで?いつから?・・・)アイデンティティもあやふやなのだから(プリズムワールド?りんね?男の子?女の子?性的指向は?・・・)。私が愛したルヰくんが、次の瞬間には存在しなくなってしまうかもしれないし、あるいはルヰくんに似ているかもしれないけれども、別のアイデンティティを備えた存在に変化してしまうかもしれない・・・。彼を愛すれば愛するほど、こうしたことにショックを受けることになるでしょう(例えば、今後の「エリア4989」の危機は、”ルヰくんの危機”に直結しそうですものね…DVDで「週替わり特別映像」ep.12 を観ました)

そう、だから、最初からハマらなければよかったのです。──もう、最初からそれ言ってよって感じですが、それ言っちゃうとそもそもこの作品の大事なところがネタバレしてしまいますものね・・・。

もろくはかない「ザ・美少年」

けれどもまた同時に、逆のことも言えてしまうのが、ルヰくんの恐ろしいところ。というのも、ルヰくんの美しさはまた、こんな儚く脆いところにもあったりすると思うからです。ルヰくんは、そんなふうに存在そのものやアイデンティティが、いつでも揺れ動きそうで、だから私たちはつい、いつも彼のことを気にかけ、心配してしまう。そして、だからこそまた、どうしようもなく彼に心惹かれていってしまう…。──そもそも15歳前後の少年というものは、ルヰくんならずとも、たいてい、ゆらゆら心が揺れ動いていたりするものです。そしてそんな様子がまた愛おしかったりもする。

そう、「少年」とは、もろく、はかないもの。本当に悲しいことだけれども、少年の美しさとはまた、そういうところからも生まれたりもします。ギリシア神話の美少年たちは、他愛もないことですぐ死んだりして、植物に生まれ変わったりしてしまう。

(もうちょっと具体的に、下世話な言い方をすれば、ルヰくんがこのまま、存在にもアイデンティティにもなんら揺れ動きを持たずに、順調に人間界で人間としてすくすくと歳をとって、おじいさんになって、年金をもらって・・・(もらえるのか?)なんてこと、想像したくないですものね、あんまり。──天羽ジュネは、もう歳とるようになったよね。人間だから。戸籍とかいつ生じたんだろう?婚約してたけど…とか、つまんないこと考えてごめん。*7

2千年の時を越えて、古代ギリシアから君に会いにきたんだよ…

さらにさらに。私はさんざん、本当のルヰくんが〜、ルヰくんがルヰくんであってほしい〜、みたいなこと言ってきてますけど、そもそもそれってなんなのか、実は説明してないんですよね・・・。ていうか、それは要するにですね、やっぱり単に私が見たいルヰくんにすぎないのです、きっと。

例えば私はルヰくんを見ると、いつのまにか、彼に様々な(これまでの人生で私の中にコツコツと蓄積されてきた)美少年の理想像を投影してしまっている。『キンプリ』とも、ルヰくんとも、直接には関係がないはずの理想像たちをそこに統合していってしまう。何度も言及してますが、例えばギリシア神話などを題材にした、(大理石の、光を透過してすべすべで、キラキラと透明感にきらめく…)彫刻の美少年像までもを、一緒に重ねて見てしまう…。

とはいえ、こういう私の見方も、完全に勝手なものとも思わない。というのも、私たちが現代日本の二次元の美少年キャラを見て、うん美少年だね、っておおむね思えるのは、やっぱり背後に”美少年のイデア”のようなものがあるからだと思うのです。そして、そのイデアのようなものは、やっぱり古代ギリシア以来の、遠い遠いところから、時間と空間を超えて(遥か遠く地中海地域から、2500年くらいかかって)延々と鳴り響いてきているものである、とも言えると思うから。まさに「地中海世界から、2千年の時を超えて、君に会いにきたんだよ!」です(嬉しい!)。だって、きっと古代ギリシア人の美少年の理想なしに、絶対にルヰくんは生まれていないと思うから*8

だから、ルヰくんは「プリズム・ボーイ」。「プリズム」とは、単純な光が分散して、散らばった幻のような光の広がりを見せてくれる装置ですよね。「プリズムボーイ」とは、別の意味で捉えるならば、「彼」を通して、様々に分散した、これまでのいくつもの美少年(ボーイ)たちの幻想が散らばって見える、そんな万華鏡のような装置(=「ボーイのプリズム」)でもあるかもしれないからです(?)。

*1:何もかも知っている美少年が、うぶなシンくんを導く、的な…。あとでわかったけど、実際、何もかも”記憶を保持”していましたね。

*2:本作と何も関係ないですが、『シメール』という小説(服部みゆき、河出文庫、2019)では、桜の木の下に立っている美少年を眺めているうちに、嗅げるはずのない「薫り」を嗅いだ(そしてその薫りが忘れられなくなった)…という場面があった。ああ、そういうこと、って思った。

*3:『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars- 公式設定資料集』、一迅社、2019年、53頁。

*4:よく出てくる「1000年前」っていうのは、要は、りんねが稼働してから、みたいな、つまり、ずっと前から、くらいの意味で捉えていいみたいなんですけど…。私、算数がとても苦手なので、ちょっとよくわからなかったんですけど…監督さんのQAによると、そういう感じらしいのです…(前掲『SSS公式設定資料集』、125頁。)

*5:関係ない作品だけど、ぬいぐるみ系異世界で比較するなら、マイメロがやってきた「マリーランド」とは大違い(『おねがいマイメロディ』)。「プリズムの輝き」と「夢」っていうのがそれぞれ、異世界とこの世界とを繋ぐポイントになっていたり(プリズムの煌めきが失われるとプリズムワールドが崩壊・消滅すると言われているように、「マリーランド」も人間界の「夢」が失われると、同様の危機に陥る…マリーランドがその住民ともども砂のようになって溶けて消えていく映像は悲しかった)、フォーマットが似ている気もするけど、全然違う。

*6:というか、別途お話しすべきことでしょうが、私、『プリティーリズム』シリーズって、どの作品も、なんとなく「怖い」って感じてしまうから、苦手なところがある。私は『プリパラ』が大好きで、それを深く理解するために『プリリズ』シリーズも見始めたのですけれども(『プリパラ』も確かにある意味で人によっては「怖い」と感じるかもしれません。あじみ先生とか、本当の狂気のように感じる人もいるかもしれない。私は大好きですが)、『プリリズ』は『プリパラ』よりも、ずっと深刻な内容を描いている。生きるのがつらくなるくらいの悩み、狂おしいほどの嫉妬、複雑な家庭事情、生死を賭けたチャレンジ…、そういった深刻な事象が、長期にわたって描かれる。プリズムショーという得体の知れない競技で人生を狂わされている人たちの様子もなんか怖いし、プリズムショーのシステムというか、仕組みもよくわからなくて、でも誰もそのことをあまり気に留めていなくて、そういうのもなんか怖いし、お洋服が喋るのも怖いし…等々。──そんなわけで、軟弱な精神の持ち主である私は、なんだかいろいろ怖いので、『プリリズ』シリーズは微妙に苦手でした。──ちょっと思ったんだけど、『プリリズ』って、もしかして、リアルタイム子供時代に見た人たちにとって、いわゆる「子供の頃のトラウマ番組」になってたりしないかな。「グレイトフルシンフォニア」とか怖かったよ? 木の枝に人が突き刺さってるみたいな映像とか。…あ、思い出してまた怖くなってきちゃった……。

*7:本籍地とかどうなってるんだろ、とか、つまらないことを考えた。帰化した外国人のような扱いになっているのかもしれない。この辺りに詳しい人はどう思ったのだろう。

*8:「つまりその後[近代ヨーロッパ以降]の美少年像も、新古典主義を介してルネサンス期の少年像を下敷きにしており、さらにはルネサンスが復活させた古代の美少年像を原型としている。誤解をおそれずに言い換えるなら、現代において生み出されるいかなる美少年像も、アニメーションやその二次創作物も含め、二五〇〇年以上前に登場した美少年なる概念の残像だとも言えるのである」。池上英洋・川口清香『美少年美術史』、ちくま学芸文庫、2016年、242-243頁。──こちらの本、非常におすすめ。さまざまな日々の疲れが、ページをめくるごとに吹き飛んでいく魔法の本。「芸術作品」がたくさんカラーで載っているのですが、何というかカラーであるため、電車などで読む際には、変なの見てると思われないように注意